スタッフのらくがき帳

鉄雄のこと(第10回)   香田です!

鉄雄は、大阪大学経済学部卒業後、

「世界の○○○」と呼ばれる一流企業へ就職しました。

 

「ワシな、坂本竜馬が夢見たみたいにな、世界を相手に商売したいんよ。」

それが彼の口ぐせでした。

 

その言葉通り、鉄雄はしばらくすると海外赴任が多くなり、

会えない期間が続きました。

ちょこちょこ帰国はしていたみたいなのですが、

ボクも当時海外出張が多く、会えなかったのです。

 

卒業後1年はたまに飲みに行ったりしていました。

次に鉄雄と再会したのは、それから3年後、オッサンの結婚披露宴でした。

 

 

ボクは鉄雄の姿を探してキョロキョロしてたのですが、

どこにも見当たりません。

 

「鉄ちゃん遅いな、道混んでんのかな。」

ボクは当然のように同じテーブルになったキョウジやミノ、サルゾーらに声をかけます。

ボクの隣の席がひとつ空いているので、鉄雄がそこに座るのでしょう。

 

すると、みんなニヤニヤしています。

 

「さっきからずーと、あそこにおるがな。」とキョウジ。

 

新郎新婦入場の時、ボクはトイレに立っていてわからなかったのですが、

キョウジが指差す方向を見ると、

なんと仲人席に鉄雄が紋付羽織袴で座り、ボクにピースサインを送っています。

 

オッサンが更に肉付きが良くなって、より貫禄が出ていたので、

仲人の鉄雄の方が新郎に見えます。

 

「でもあいつ独身やのに……。」と言いかけると、

「ちゃんとおるがな」とキョウジが再度指差す。

 

確かにいました。あの女どっかで……、そうや、鉄ちゃんが中学で付き合ってた女や。

レディースに入るから言うて鉄雄が振られた女。写真で見たことある……。

 

「地獄の愛子……。」 鉄雄と同じ地元のサルゾーが、ボソッとつぶやきます。

 

そうです、鉄雄の地元で伝説のレディースと恐れられた「地獄の愛子」。

美人であることは間違いありません。

しかし気合いが入りまくっているのか、真っキンキンの前髪を90度立てて

和服まで着てるもんですから、まるで「極道のおんな」です。

 

「いつ結婚しよったんや。」と聞くと、

今日のために昨日入籍した、とのことでした。

 

みんな知っていたらしいのですが、

鉄雄が「こーやんびっくりさせるから黙っとけ」と口止めしていたのです。

 

ボクは鉄雄があの若さで仲人を務めることよりも、

「地獄の愛子」を嫁に迎えた根性に関心しました。

 

「さすが鉄ちゃんや、根性有るわ……。」

皆何も言わずウンウンとうなずいていました。

 

披露宴が無事終わり、新婦も仲人の嫁も置き去りにして6人でささやかな二次会です。

オッサンのオトンが鉄雄の仲人謝礼をたっぷりはずんだので、新地へ直行しました。

 

さんざん飲んで上機嫌になった鉄雄は

「さあ、三次会や、次、上新庄な、愛子の店行こ。」

 

ボクは一瞬「えっ?」と思いましたが、鉄雄の誘いなので断れません。

 

 

「地獄の愛子」の店は「ホット・ロード」という、いかにもなネーミングでした。

 

「愛子、すまん。仲人謝礼全部飲んでもーた。」

「何をやっとるんやろうね、このアホタレが。」

 

そういうと愛子はボクの前に来て言いました。

 

「アンタが鉄雄の兄弟盃?こーやんやね。」

 

伝説のレディースを前にしてボクの緊張はピークに達し、

思わず「ハイ」と言ってしまいました。みんなゲラゲラ笑っています。

 

すると愛子は、ボクに深々と頭を下げて言いました。

 

 

「ウチの鉄雄のこと、一生よろしくお願いします。」

 

 

ボクはさっきまで完全にビビっていたこともコロッと忘れました。

 

 

「鉄ちゃん、ええ嫁さんもうて良かったのう!」

 

その日はボクにとっても、おそらく人生でベスト3にはランキングされるであろう

幸せな夜でした。     

(第11回へ続く)

 

  次回予告  鉄雄の愛娘瀬梨華ちゃんへの溺愛ぶりといったら。

        「親はみんな親バカで、親バカでない親は単なるバカ。」という言葉も

あるが、その親バカぶりはハンパではなかった。

11回は「瀬梨華ちゃんの入園式スペシャル」。

いつもより増ページ特別バージョンでどうぞ!

 

2011年06月21日 | カテゴリー:スタッフのらくがき帳

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