スタッフのらくがき帳

やっぱり、友だちはええナ   香田です!

先週の土曜日夜、会社で『鉄雄のこと 番外編―後編』をアップして

まだ30分も経過していない頃でした。

登場人物の一人でもある饅頭屋のキョウジから電話がありましてね。

 

「今日これから久々に鉄雄の家にみんなで集まるんやけど、時間あるか?」

 

「これからお客さんとこに行くけど、ちょっと遅くなってもええんやったら行くわ」

 

そう答えはしたものの、内心では

(台風来とるし、雨もおもくそ降っとるし。

いっぺん家に車置いてチャリで行かなあかんがな、めんどくさいな………)

と考えていたボクでした。

 

鉄雄の家にずぶ濡れで到着したボクは、愛子ちゃんにすすめられて

お風呂を拝借し、ついでに鉄雄のジャージを借りて着替えました。

席に就いたのは10時を回った頃でした。

関係者全員が集合したのは、2年半ぶりのことでしょうか。

 

「今日みんながここに集まったのはな、愛ちゃんと瀬梨ちゃんにプレゼントがあるんよ」

 

(そんなん何もワシ聞いてへんがな………)

そう思いながらポカンとしているボクや愛子ちゃん、瀬梨華ちゃんを見ながら、

キョウジはさらに続けます。

 

「まあ、わしら全員からやのうて、こーやんからのプレゼントやけどな」

 

そう言うとキョウジは自分のカバンから

『コロンの印象』『鉄雄のこと 1~最終話』『鉄雄のこと 番外編』の

原稿を取り出して、二人の前に置きました。

 

ボク、ブログのことは愛子ちゃんや瀬梨華ちゃんには話してなかったのです。

 

そんな二人にキョウジは、ボクの気持ちまで代弁しました。

 

鉄雄の話を会社のブログに書きたいから、ボクから電話があったら

それは取材だから例え仕事中でも電話に出ろと言われたこと。

 

書くのはボクだけど、その時どんなことがあって誰が何をし、どんなことを言ったかを

みんなで思い出すことで、鉄雄との時代を永遠のものにすること。

 

『コロンの印象』は、一見『鉄雄のこと』とは関係ないように見えるが、

実はボクの中ではこの三篇は三部作になっていて、

『コロンの印象』は『鉄雄のこと』のプロローグであること。

 

ボクの制作意図まで、キョウジは丁寧に説明しました。

 

「また後で読んでな。」と恥ずかしがるボクを尻目に、

 

「鉄ちゃんに対するこーやんの気持ちが全部詰まってるんや。

 それはオレら全員の鉄ちゃんへの思いでもある。

 二人共、早よ、読んでみ」

 

そうキョウジは二人を促します。

 

『コロンの印象』から読み始めた愛ちゃんは、

 

「こーやん、まだこの娘のこと引き摺ってるん?

 アンタもう51やで、付き合ってたん高校の頃やろ」とか、

 

「ああ、この斎藤先生の話は150回以上聞いたわ、なぁ瀬梨華!」

 

などと二人でゲラゲラ笑いながら読んでいました。

 

でも『鉄雄のこと 10話』にさしかかる頃になると様相が変わりました。

誰も、ひと言も言葉を発しません。沈黙だけが流れます。

 

その空気に耐えかねるようにミノが、

「披露宴の時にな……」と言いかけたのを、

隣にいたサルゾーが「シっ!」と人差し指を口にあてて制します。

 

11話を読んでいる最中、

愛ちゃんの隣で寄り添うように読んでいた瀬梨華ちゃんが、

小さく、まるでつぶやくように声を出しました。

 

 

「…………パパ…………」

 

その言葉をきっかけに、まるで堰を切ったかのように

二人の眼から涙が零れ始めました。

 

涙もろいミノなんか、ソッコーでもらい泣きしています。

 

「ハァハァ言いながら泣くなよ、気持ち悪いから」

オッサンが精一杯茶化しながら涙声でミノに言ったのですが、

誰も笑いません。また静寂が支配します。

 

ボクは気恥かしいのと、何かものすごく悪いことをしたような気持ちで、

久しぶりに飲む酒をロックでガンガン飲っていました。

 

 

二人が読み終えました。

 

顔をあげた愛子ちゃんがボクに言いました。

 

「約束やで、こーやん。

 瀬梨華が結婚する時、ホントに鉄雄の代わり頼むよ!」

 

もちろんです。ボクは無言で頷きました。

 

「ほんとはな、もっと早く二人に見せたかったんや。

 でもこーやんがなかなか完結しよらへんかったからな。

 今日やっと終わったんや。」

最後にキョウジが付け加えました。

 

その後のことは、ほとんど記憶にありません。

気が付いたら朝の4時。パンツいっちょで自宅の廊下で寝ていました。

 

後で電話して聞いたら、

キョウジとミノがベロベロになったボクをタクシーで家まで送ってくれたそうです。

 

2011年09月04日 | カテゴリー:スタッフのらくがき帳

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