スタッフのらくがき帳

松広屋の住人たち 第2回  香田です!

第二章     会員ナンバー2 果物屋のツーさん

 

松広屋へ通い始めて、いつも疑問に思っていることがありました。

 

(……みんなが話してる会員ナンバー2の『ツーさん』って、どんな人やろう……)

ボクには「ナンバー2はツーさんや」という、葬儀屋の梅さんの情報しかありません。

松広屋へは水曜の昼しか行かなかったのですが、

たまたまその時期、ツーさんはライオンズか何かの用事で忙しかったらしいのです。

 

確か通い始めて7カ月くらいだったと思うのですが、

やっとツーさんと会う機会がありました。

 

会ってびっくりしました。ボクの同級生のおとうさんだったのです。

何度も遊びに行ったことがあるので、ひと目でわかりました。

 

「おー、香田クンやないか、10年ぶり、いやもっと経っとるなぁ。

 元気にしとったか?商売なにしてんねん、おとうさんの会社か?」

 

「いや、オヤジは誰も継がへんから言うて、土建屋整理して引退しました。

 ボク、不動産業ですけど、香田の家の事業には関わってません。」

 

「なんで家業を手伝えへんねん、親不孝もんが!

 ウチの坊主らと一緒やなぁ、世の中ホンマうまいこといかへんなぁ。

 せっかくあんたのおじいさんが………」

 

と言いかけて、ツーさんは店にいた薬屋のご隠居の方を向き、

思い出したようにしゃべり始めたのです。

 

「ご隠居!知ってはりました?この子、香田会長の孫さんですわ!」

 

それを聞いたご隠居が「えーっ!」と大きな声を出しました。

ご隠居もこんな大きな声が出せるんや、とこっちがびっくりしたくらいです。

 

「あんた、香田はんの孫さんかいな。

 わたしは本当にあんたのおじいさんにはお世話になったんや。

 ほうか、ほんなら香田はんと並んで車の後部座席に座ってた小さかった子があんたか?」

 

「たぶんそうや思います。」

 

それからご隠居は、ウチのじいさんが不動産業を始めた当初は、府道沿いの広い用地を買収するまで、駅前の小さな店舗で商売していたこと。

そしてその目と鼻の先に自分の店もあったから、しょっちゅう二人で遊びまわったことなどを懐かしそうに話しました。

 

ご隠居がこんなにたくさんしゃべるのを見たのはこの時だけです。

あんまりしゃべるので、「もしかしてお迎えが来たらどうしよう」と思ったくらいです。

 

「ところで香田クン、そんなテーブルにおらんとカウンターにおいでや。」

ツーさんがそう言うので、

 

「いや、ボクまだここの客になって1年たってないから会員番号もうてないし、

 テーブルでいいですわ。」

 

実は梅さんから聞いていたんです。

1年間通ったら正規会員にしてカウンターに座らしたると。

 

「かまへんかまへん、キミはご隠居とワシの言わば知り合いや。カウンターに座り!

 ところで、誰がそんな余計なこと言うたんや。」

 

ボクが黙ってると梅さんが

 

「せやかて前につーやんが言うたやないけ、1年以上通わな会員にせえへんて。

 ワシ、ツーやんの知り合いとは知らんかったんや。」

 

「オマエはホンマに昔からいらんことしぃやのう。

 香田クン、こいつ今えらそうにしとるけどな、こいつの小・中学校時代のあだ名

 教えたるわ、『ウンコたれ』や。

 小学校1年の時にな、授業中にがまんできんようになって、

 こいつウンコ漏らしよったんや。なぁ、ウンコたれ!」

 

「ツーやん、ワシ一生その話あちこちで言われなあかんのか?

 ええかげん堪忍してくれや。」

 

あとでよくよく話を聞くと、ツーさんと梅さん、魚屋の武さん(会員ナンバー4)3人は、

小学校からの同級生でずっと地元で育って親の商売を継いだ仲間。

でもボクから見れば、梅さんや武さんは明らかにツーさんの舎弟。

 

それから以後、しょっちゅう聞いたことですが

「おまえ中学ん時、弱いくせに二中の奴らにケンカ売って反対に半泣きにされてたん

 助けたったんはどこのどなた様やねん」というツーさんの言葉を聞く度に、

学生時代の力関係は絶対やな、と思ったもんです。

 

ツーさんはボクが小学校在学時、PTA会長も務めるほど教育熱心で理想のおとうさんと

思っていたのですが、(この人も学生時代ワルかったんやろうな)と思うと、

妙にうれしくなるボクでした。

 

この日、ボクは会員ナンバー7をもらい、店での通名は『3代目』となりました。

       

                                 (第3回に続く)

 

2011年09月08日 | カテゴリー:スタッフのらくがき帳

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