スタッフのらくがき帳

松広屋の住人たち (第4回)   香田です!

第四章     会員ナンバー4 魚屋の武(たけし)さん 前編

 

武さんは、寡黙な男だ。

 

小学校からの同級生であるツーさん(2)や梅さん(3)がとてもおしゃべりなのに対し、

時々話題を振られてひと言ふた言、ボソッと受け答えする程度なんです。

 

家業の魚屋も、店の前面に出るのは決まって奥さんで、

武さんはいつも奥で魚をさばいたり、焼いたりしています。

 

以前ツーさんから聞いた話ですが、この武さん、

大昔のホームドラマ『時間ですよ』に出演していた

藤竜也の役どころが自分の理想とするところなのだそうです。

 

このドラマで藤竜也が演じた謎の男には、ほとんどセリフがない。

この男が登場するシーンは、きまって小料理屋。

いつも一人カウンターの奥で、枡酒を飲んでいる。

 

そして藤竜也がポケットからくしゃくしゃになったタバコの箱を取り出し、

やや折れ曲がったタバコを口にくわえると、

これまた無口な店の女将(篠ひろ子)がマッチを擦って無言で差し出す。

 

ふたりの間には、ほのかな恋愛感情以上の関係がありそうでなさそうで…………。

 

若き日の武さんは、とにかくこの謎の男にあこがれました。

 

 

松広屋が出来てまだ1年も経っていない頃の話です。

 

ある日、駅前商店街のはずれに一軒のスナックがオープンしました。

『華』という店名の、和風スナックです。

 

まず、その店には『新しもん好き』の梅さんが行きました。

 

「あのスナック行ったら、ママがすごい美人やったんや。

 おりょうさん(篠ひろ子の役)とはちょっとタイプは違うけど、

 無口でしっとりとした日本的美人や。」

 

その日、三人揃って華へ行ったらしいのですが、

それから数カ月の間、武さんは松広屋へ顔をまったく出さなくなりました。

 

武さんの『華』通いが始まったのです。

 

                   (5回中編へ続く)

 

2011年09月17日 | カテゴリー:スタッフのらくがき帳

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