スタッフのらくがき帳

松広屋の住人達 (第5回) 香田です!

第4章  会員ナンバー4 魚屋の武(たけし)さん 中編

 

「なぁ梅よ、武は今日も華のママんとこ行っとるんかなぁ。」

「………。たぶんそうやろ。まぁしかしよう続くわ。

 よっぽど気にいったんやな武ちゃん。」

 

「でもなぁ、あんな無愛想なママのどこがええねん。

 ワシなんか、1回行っただけでもうええわと思たで。」

 

幼なじみの武さんが松広屋へ顔を出さなくなって、

ツーさんも梅さんも少しさびしかったのです。

二人は、(いっぺんどんな様子か見に行こ!)ということになりました。

 

華へ行ってみると、お客さんは武さんだけでした。

 

そりゃそうです。

いくら美人でも、ここのママはあまりにも無口すぎた!

当初は珍しがって来店していた客も飽きて来なくなり、

店は閑古鳥が鳴いていました。

 

カウンターの一番奥には武さん。

ツーさんと梅さんは少し離れたテーブル席に座り、様子をうかがいました。

 

「なぁ、もう10分や。二人共、なーんもしゃべりよらん。二人だけの世界か?」

ツーさんが半ばあきれたように小声で言います。

 

「ほんまや、完全に藤竜也と篠ひろ子や。

 あっ、ツーやん見てみ!」

 

武さんがタバコの箱を取り出します。タバコの箱はくしゃくしゃになっています。

 

ツーさんがボクに語ったところによると、

(あれはたぶん武がわざと自分でやったんや)とのこと。

 

「ツーやんツーやん、見て、ほら!

 タバコを持つ武ちゃんの手、プルプル震えとる。藤竜也や。

 武ちゃん今、完全に藤竜也になりきっとる!」

 

その通り、今まさに武さんは自分が理想とする男を演じきっているのです。

 

華のママが無言でマッチを擦り、武さんに差し出します。

武さんも伏せ目がちに無言で軽く会釈します。

 

ツーさんと梅さんは、アホらし過ぎてあっけにとられました。

そして(めんどくさいから、しばらく放っておこう)ということになりました。

 

しかし、この二人だけの世界は、さらに数ヵ月後、意外な形であっさりと崩壊します。

そしてその原因となったのが他ならぬツーさんでした。

 

                         (第6回 後編に続く)

 

 

2011年09月18日 | カテゴリー:スタッフのらくがき帳

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